【気にしすぎない】勘定科目の間違いで影響があるケースは限られる

税理士の伴 洋太郎(ばん ようたろう) @ban_tax240です。

勘定科目って、間違えるとなんかマズいことあるの・・・?

そうお考えの中小企業、個人事業主の方に向けた記事です。当記事では、勘定科目を間違えた場合の影響について、税理士が解説しています。

読んでいただくと、次のようなことがわかりますよ!

勘定科目を間違えた場合の影響について
  • 税金の額に影響があるケースは限定的
    あまり気にしなくて大丈夫です
  • 貸借対照表科目と損益計算書科目との違いには気をつける
    間違えると、税額に影響が及ぶ可能性があります
  • 重要性が高い科目には気をつける
    間違えると、税額もしくは経営判断に影響が及ぶ可能性があります

税金の額に影響があるケースは限定的

勘定科目の間違いは、そんなに気にしなくて大丈夫です。
間違っても、税金の額に影響が及ばないケースが大半であるためです。

税金は利益に対してかかるものですね。利益は、つぎの計算式で計算します。

利益・税金の計算式 利益 = 収入 - 経費
税額 = 利益 × 税率

この「収入」と「経費」のなかに、いろいろな科目があるわけです。たとえば、次のようなかんじ。

収入科目の一例
  • 売上高
  • 雑収入
  • 受取利息
  • 受取配当金
経費科目の一例
  • 仕入高
  • 外注費
  • 福利厚生費
  • 消耗品費

このとき、本来「消耗品費」として登録すべきものを「福利厚生費」で登録したとしても、計算結果には影響がありません。「経費科目」という枠のなかで、内訳金額が変わったに過ぎないためです。

利益の金額に影響がないということは、税額の金額にも影響がないということですね。それに中小企業は、大企業ほど厳格な会計処理は求められていません。だから、それほど気にする必要がないんです。

ただし、業績判断に重要な影響を及ぼす(いわゆるKPIとなっている)勘定科目については気を配るべきでしょう。経営者の経営判断をゆがめてしまう可能性があるためです。
仕入高や外注費や人件費(給料手当、福利厚生費、法定福利費などの総称)、広告宣伝費などがその代表格です。

損益グループ科目と貸借グループ科目との違いには気をつける

勘定科目のなかでも、「損益グループ」に含まれるものと「貸借グループ」に含まれるものとを間違えてしまうのはマズいです。税金の金額に影響があるためです。

損益グループ【例】
  • 収入科目
    売上高、雑収入、受取利息、受取配当金
  • 経費科目
    仕入高、外注費、福利厚生費、消耗品費
貸借グループ【例】
  • 資産科目
    現金預金、売掛金
  • 負債科目
    買掛金、借入金
  • 資本科目
    資本金、繰越利益剰余金

損益グループの中で勘定科目を間違えてもそんなに気にしなくていい。これは「税金の額に影響があるケースは限定的」で書いたとおりです。

一方で、損益グループで登録すべきものを貸借グループで登録してしまった場合には、税金の金額に影響があります。損益の損益の金額が変わってしまうため(=税額に影響があるため)です。

税理士として会計ソフトの入力内容をたくさんチェックしてきた私が思う、よくある間違いが以下の通りです。

損益と貸借をまたぐ、よくある間違い
  • 車関係
    車両費(損益)と車両運搬具(貸借)
  • 備品類
    消耗品費(損益)と工具器具備品(貸借)
  • 借入返済
    支払利息(損益)と借入金(貸借)

重要度の高い科目には気をつける

勘定科目の中でも、重要度の高いものには気を配りましょう。重要度というのは、具体的には「金額的な重要度」と「科目自体の重要度」のことをいいます。

金額の重要度

年間の合計金額が大きい科目です。1回あたりは少額でも、累積すると大きな金額になるものも含みます。

科目の重要性

税の優遇の対象となる科目や、経費計上できる金額が制限されている科目などです

それぞれ、なぜ気を配るべきか解説します。

金額の重要度が高い科目は税務署に追求されやすい

年間の合計金額がもともと少ない勘定科目は、多少間違えても税額に影響が及ぶ可能正は少ないです。税務調査官は「少額不追求」の姿勢で調査を行なっているためです。

少額不追求とは、少額なものにまで厳格な処理を求めることは妥当ではない、という考え方。些細な金額まで事細かに是正させようとするのは、税務署としても面倒なんです。税務調査の現場で間違いが見つかった場合でも

今回は指導事項にとどめておきます

といわれて終わってしまうことも、多々あります。だからこそ逆に、金額の重要度が高い科目は気にかけなければいけないんですね。

さらに、毎年大きな金額が計上される勘定科目の登録を間違えてしまうのも要注意。その勘定科目の年度ごとの上下動が激しくなってしまうからです。税務署からすると、そういうのは気になるんですよ。なにか不正がおこなわれているシグナルなんじゃないかって。

いらぬ疑いの目を向けられてしまう可能正もありますので、金額が大きな勘定科目は注意が必要になるんです。

科目の重要性が高い科目

勘定科目の中には、税金を計算するときに特殊な処理をするものがあります。
法人の場合、たとえば次のようなものが挙げられます(これ以外にもたくさんあります)。

税務上、特殊な処理をする勘定科目【法人の場合】
  • 交際費
    一定金額を超えた部分は経費になりません
  • 受取配当金
    一定金額までが収益から除かれます
  • 試験研究費
    一定金額を超える場合には、税額軽減の特典をうけられます

これらは勘定科目名ではなく、その取引の実態で判断されます。「交際費」以外の勘定科目で登録されていたとしても、その取引の実態が接待交際を目的としたものであれば、税務申告上は交際費の一部として取り扱うということです。

かといって、本来「交際費」として登録されるべきものが別の勘定科目で登録されていても問題なし!ってわけでもありません。税務申告の際に、それを見落としてしまう可能性が大きく高まってしまうためです。

また、過去に税務調査で処理誤りが指摘された勘定科目についても注意してください。次の税務調査で、必ずチェックされるためです。

登録する勘定科目を間違えてしまうと、これら特殊な処理にも影響を与えてしまう可能性があります。そのため、税金の金額に影響が及びやすい科目については気を配る必要があるんですね。

まとめ

勘定科目を間違えた場合の影響について、税理士が解説しました。

勘定科目を間違えた場合の影響について
  • 税金の額に影響があるケースは限定的
    あまり気にしなくて大丈夫です
  • 貸借対照表科目と損益計算書科目との違いには気をつける
    間違えると、税額に影響が及ぶ可能性があります
  • 重要性が高い科目には気をつける
    間違えると、税額もしくは経営判断に影響が及ぶ可能性があります

この記事を書いたひと

伴 洋太郎(ばん ようたろう)
伴 洋太郎(ばん ようたろう)税理士
BANZAI税理士事務所 代表税理士。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。1982年6月21日生まれ。個人事業主、フリーランス、小規模法人の税務が得意で、一般の方向けにやさしい解説記事を書けるのが強み。詳しいプロフィールはこちら。
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