決算書、社員に見せるか見せないか問題。税理士がオススメの方法をご提案します。

税理士の伴 洋太郎(ばん ようたろう)@ban_tax240です。

従業員を雇っている経営者様!決算書を従業員に見せていますか?

見せたくないというお気持ちはよーくわかります。私も財布の中身を他人に見られるのは嫌ですし。

ただし税理士としては、決算書を従業員に開示することをオススメしています。
全部じゃなくてもいいんです。一部だけでも従業員と共有しましょう!

従業員へ決算書を見せない理由

株式会社は、決算公告という方法により決算内容を開示する義務があります。

株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。

決算公告とは、官報への掲載、日刊新聞への掲載、電子公告のいずれかによって、決算内容を開示することをいいます。

ですから「見せるか、見せないか」という議論をする以前に、公に開示をしなきゃいけないです。中小企業であれば、決算書のうち少なくとも貸借対照表は公告しなければなりません。

ただし実態として、多くの中小企業は決算公告を行っていません。

なんで行っていないかというと、まずそんな義務が有ることを知らないし、知ってても開示したくないし、公告しなくても罰せられることは殆ど無いからでしょう。

もちろん、従業員へも決算書を開示していないことが大変多いです。その理由としてよくお聞きするもの、感じるものを挙げていきます。

当記事は決算公告の是非を問うものではありません。上述のとおり、決算公告は義務です。その前提で、積極的に社員と共有すべきかというお話をします。

そもそも必要を感じていない

通常、経営者以外に自社の決算書を見せる相手には

  1. 税務署(税務申告のため・法律で定められているから)
  2. 銀行(融資を受けるため・背に腹は変えられない)
  3. 得意先(取引の条件となっているため・背に腹は変えられない)

があり、これらについて疑問を感じている方は少ないはずです。

かたや従業員。見せたところでなんかいいことあるの?

従業員の不満を招くのではないか?

例えば

「役員報酬こんなにもらってるのかよ!」とか
「こんなに利益出てるなら俺らに還元しろよ!」とか

不平不満を誘発してしまうのではないかと心配しているケースです。

外部に情報が漏れてしまうのではないか?

上場会社の場合、決算書の開示義務があるので、いつでも誰でも会社の決算書を見て、分析をすることができます。それがライバル会社同士であったとしても。

一方、非上場会社の場合には開示義務が無いので、決算内容を秘匿することができるわけです。これは確かに、会社を上場しないことのメリットの一つと言えます。

従業員に決算書を開示すると、巡り巡ってライバル会社にも内容が知られてしまうのではないか。そんな心配をしている経営者様もいらっしゃいます。

なぜ決算書を従業員に開示するか

決算書を従業員に開示することには、確かなメリットがあります。

生産性を意識してもらう

生産性とは

従業員を雇っている経営者が強く意識すべきこと。それは「生産性」です。

生産性(せいさんせい、Productivity)とは、経済学で生産活動に対する生産要素(労働・資本など)の寄与度、あるいは、資源から付加価値を産み出す際の効率の程度のことを指す。 一定の資源からどれだけ多くの付加価値を産み出せるかという測定法と、一定の付加価値をどれだけ少ない資源で産み出せるかという測定法が在る。

 

難しく書いていますが、ザックリいうと

インプット(投入量)に対して、どの程度のアウトプット(産出量)を生み出せるか

という、生産効率をあらわす尺度です。

生産性

インプットには

  1. ヒトをあらわす労働力
  2. モノ・カネをあらわす資本

の2つがあります。

生産性

一方のアウトプットとは、売上高や付加価値(その企業が独自に創り出した価値)のことをいいます。

付加価値についてはコチラの記事をご参照くださいませ。

生産性は従業員にこそ意識してもらいたい

会社の生産性は決算書に記載されている数字から計算することができ、経営者がこれを意識すべきであることは言うまでもありません。

これをインプットである労働力、つまり従業員自身にも意識してもらおう!ということです。どうせ働いていただくなら、効率よく働いてもらいたいですもんね。

アウトプットを産み出すのは従業員です。経営者が生産性を高めよう高めようと思っているだけでは始まりません。

そこで、従業員自らに生産効率を向上させようとする意識を持ってもらいたいわけです。

経営課題を共有してもらう

決算書を従業員に開示していない会社の経営者が、経営課題について従業員に語る。
こんな状況での従業員の気持ちを率直に代弁すると

ほんまかいな。
です。
いやこれ、ほんとですよ。なぜなら私自身が一般企業に勤めていた時の感覚そのものだからです。

要は、経営者の語る言葉に数字の裏付けがないわけです。あるとすれば自分の給与金額ぐらいでしょう。だとすれば、従業員にとっての課題は「自分がもっと給与をもらうためにはどうするか」に集約されてしまいます。

強力なリーダーシップを有する経営者であっても、その課題の解決には従業員の協力が不可欠です。協力を取り付けるために、課題の共有はできるようにしておきましょう。

どのように従業員へ決算書を開示するか

最初に申し上げたように、従業員へ決算書を丸裸にすることには抵抗があるものです。
そこで、無理なく開示するための工夫をご提案します。

一人当たりの金額に直す

決算書に記載されている金額をそのまま開示することに抵抗のある経営者様は多いでしょう。そこでオススメするのは、決算書に記載された各金額を従業員の人数で割って、一人当たりの金額で開示する方法です。

この方法のいいところは以下の通り

  1. 全体の規模感を秘匿できる
  2. 金額に現実味を持たせることができる

特定の項目だけ開示する

見せたくない数字があるなら見せなきゃいいじゃん! そう言うことです。

生産性を従業員に意識してもらうことの重要性は既述の通りです。ならば、生産性に関わる項目(ざっくり言えば粗利益に関わる部分)だけ開示するとか、経営の課題を反映している項目だけ開示するといったことでも、十分に効果は見込めます

まとめ

従業員へ決算書を開示することの効果と、その方法についてお話ししました。

でも一番必要なことは、誰に見せても恥ずかしくない決算書を作ることなんです。作るっていっても、お化粧するという意味ではないですよ。それだけの利益を出すとか、財務状態を改善するとか、経営者が私利私欲のために会社を経営しないとか、そういう意味です。

人間やっぱり、腹を割って話してくれる人のことをより信用するものです。
私も税理士として、なるべくそうありたいなと思っています。

この記事を書いたひと

伴 洋太郎(ばん ようたろう)
伴 洋太郎(ばん ようたろう)税理士
BANZAI税理士事務所 代表税理士。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。1982年6月21日生まれ。個人事業主、フリーランス、小規模法人の税務が得意で、一般の方向けにやさしい解説記事を書けるのが強み。詳しいプロフィールはこちら。
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