【家事按分】水道光熱費の按分割合の求め方と仕訳方法

税理士の伴 洋太郎(ばん ようたろう) @ban_tax240です。

自宅兼事務所の電気/ガス/水道代を経費にしたいんだけど、どうしたら良いの?

そうお考えの方へ向けた記事です。

当記事では、個人事業主が自宅兼事務所の水道光熱費を経費にするために必要な、家事按分について解説しています。

読んでいただくと、次のようなことがわかりますよ!

車の家事按分について
  • 按分の方法
    「消費量」「建物の使用割合」または「コンセントの数」をもとに按分します
  • 仕訳方法
    月ごとまたは年ごとにまとめて按分します。

【前提】家事按分の際、意識すべきこと

個人事業主が仕事・プライベート兼用で使っている電気/ガス/水道代は、その金額に「按分割合」をかけた部分だけが経費として申告できます

プライベート使用した分については、業務上の経費ではないためです。
支払った水道光熱費を「プライベート使用分」と「業務使用分」に分ける(按分)しなければならないんです。

その際、意識すべきことがあります。
それは「按分方法は合理的に計算されているか?」ということです。

按分割合とは

按分割合は、その電気/ガス/水道を業務用に使っている部分の割合で求めます。

その求め方は、具体的に法律などで決まっているわけではありません。
とはいえ、お手盛りでザックリきめてしまうのはいけません。

個人事業主が家事関連費※の一部を経費にするためには次の2つの要件を満たしていることが必要だからです。

家事関連費とは 仕事とプライベートに共通してかかる費用のこと

ひとつでも欠けていたら、経費としては認められません。

経費にするために必要なこと
  1. 業務の遂行上必要であること
  2. その必要な部分の金額が明確に区分されていること

家事按分の方法は、これら2つの要件をクリアするものであることが前提となります。

明確に区分できなきゃ経費にできない

「業務の遂行上必要」という要件については、そりゃそうだって感じですよね?
業務に関係ないプライベートな支払いは、とうぜん経費にはなりません。

大事なのは2番め、「明確に区分されていること」です。ここが抜けてはいけません。

業務使用分の金額が明確に区分できないと、業務に必要であったとしても経費として認められないからです。

ネット上の解説記事には

だいたい50%くらいなら税務署も許してくれるよ~。

みたいに何の根拠もなく書かれているものも見受けられます。

しかし、そんなユルいもんじゃないんです実際のところ。

【按分方法】具体例3選

家事按分の方法は、法律で決まっているわけではありません。合理的な方法であれば何でもいいんです。

ということで、ここでは具体的な按分方法を3つご紹介します。

水道光熱費の按分例
  1. 消費量で按分する方法
  2. 建物の使用割合で按分する方法
  3. コンセントの数で按分する方法

消費量で按分する方法

水道光熱費の按分割合は、全体の消費量のうち業務のために消費した量の割合で計算できます。

電気(kWh)も、ガスも水道も(立米)、検針票などで消費量を明確に把握できるためです。

ただし、この按分方法には大きな課題があります。自宅全体の消費量は容易に把握できる一方で、その内訳(プライベート使用分と業務使用分)を把握することは困難だからです。

ということで、この方法を使うのであれば、業務で使用した量を概算することとなります。

『業務で使用する機器の消費電力×標準的な使用時間』とか、『来客1件あたりの使用水量×平均来客件数』とかで計算しましょう。

めんどくさいですね・・・^^;

自宅の使用割合(面積や時間)で按分する方法

水道光熱費は、自宅のうち仕事用に使っている面積や時間の割合で計算することもできます。家賃を家事按分するときと同じ方法です。

建物としての使用割合が合理的に計算できるのであれば、その割合を水道光熱費に流用しても多少は合理性があると言えるでしょう。

ただし、ただしです。この方法は水道代やガス代を計算するにあたってはイケてない面もあります

ガスや水道は、自宅のうち特定の場所(キッチン、風呂場)での消費量が突出して多いためです。特定の場所で消費されるものを、自宅全体の使用割合で按分することがどこまで合理的であるといえるか・・・。

また水やガスって、大半は日常生活(食事や排泄、入浴)のために使うものですよね。そもそも業務のために使っている量は限られるはずなのです(飲食店をやってるとかなら話は別ですが)。

と、いうわけで。水道やガスの按分でこの方法を使うのなら、それ相応に合理性のある説明を準備しておくことが求められます。

コンセントの数で按分する

電気代であれば、「自宅全体のコンセントの数」に占める「仕事用のスペースにあるコンセントの数」で按分することもできます。

コンセントの数は目視で正確に計測でき、お手盛りな計算になりにくいためです。そのぶん合理的なんですね。

しかしこの方法、水道代とガス代を按分するためには使えません。コンセントですからね。

【仕訳】まとめて仕訳するか、その都度か

家事按分した水道光熱費の仕訳方法は、主に2つ考えられます。

仕訳方法の種類
  1. 支払い時に全額を事業分(水道光熱費)として登録して、決算時に家事分(事業主貸)を差し引く方法
  2. 支払いの都度、事業分(水道光熱費)と家事(事業主貸)を分けて登録する方法

以下、それぞれの方法について解説します。

【仕訳1】全額を水道光熱費にしてから、家事分をまとめて引く方法

毎月の支払い時には全額を『水道光熱費』にしておいて、決算時にプライベート使用分を『事業主貸』に振り替える方法です。

按分処理が1回で済むメリットがある一方、毎月の経費が本来より多めに計上されてしまう(決算で帳尻をあわせる)デメリットがあります。

とにかく楽な方が良い!

という方はこちらの方法でやりましょう。

水道光熱費を支払ったとき

【仕訳】
借方 金額 貸方 金額
水道光熱費 80,000 普通預金 80,000

決算時

【仕訳】
借方 金額 貸方 金額
事業主貸 748,000 水道光熱費 748,800

【仕訳2】支払いの都度、家事分と業務分を分ける方法

毎月の支払い時に、事業部分と家事部分を分けて仕訳する方法です。

毎月の経費の金額が正しく計上されるメリットがある一方、按分処理の回数が増えてしまうデメリットがあります。

多少面倒でも、毎月の収益管理をしっかりやりたい! という方は、こちらの方法でやりましょう。

【仕訳】
借方 金額 貸方 金額
水道光熱費 17,600 普通預金 80,000
事業主貸 62,400

まとめ

個人事業主が自宅兼事務所の水道光熱費を経費にするために必要な、家事按分について解説しました。

車の家事按分について
  • 按分の方法
    「消費量」「建物の使用割合」または「コンセントの数」をもとに按分します
  • 仕訳方法
    月ごとまたは年ごとにまとめて按分します。

この記事を書いたひと

伴 洋太郎(ばん ようたろう)
伴 洋太郎(ばん ようたろう)税理士
BANZAI税理士事務所 代表税理士。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。1982年6月21日生まれ。個人事業主、フリーランス、小規模法人の税務が得意で、一般の方向けにやさしい解説記事を書けるのが強み。詳しいプロフィールはこちら。
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