芸能人の服アクセサリー

芸能人の洋服・アクセサリー代はどこまで経費にできるか

芸能人の服アクセサリー

税理士の伴 洋太郎(ばん ようたろう) @ban_tax240です。

芸能人の洋服代やアクセサリー代は、経費にならないのかね?

芸能人は人前に立つのが仕事なんだから、身につけるものも経費にしていいんじゃないの?

そうお考えの方へむけた記事です。

当記事では、芸能人やタレントの被服費が経費になるかどうかを解説しています。

ご覧いただくと、つぎのようなことがわかりますよ。

芸能人の洋服・アクセサリー代はどこまで経費にできるか
  • 出演用にしか使えないもの 全額経費に出来ます。
  • 私的にも使えるもの 一部を経費にできますが、相応の理論武装が必要です。
  • 私的にしか使わないもの もちろん、経費にできません。

【原則】生活費の性質があるものは経費にできない

トルソーにかかったスーツ

服飾費や飲食費、遊興費などの生活費は、基本的には経費になりません。

税金を計算するにあたっては「経費として申告できるのは、事業を行うにあたって必要なものにかぎる」という、大原則があるためです。

個人事業主の場合
  • 業務と関係ないプライベートな支出(家事費といいます)として扱われます。
  • 家事費は経費として申告できません
法人役員の場合
  • 法人が役員に、現物(洋服)給与を臨時に支給したものとして扱われます。
  • 臨時の役員給与は、経費として申告できません
  • 現物給与なので、役員にはバッチリ所得税と住民税がかかります

▼たとえば、家族旅行なんかもそうです▼

▼「現物給与」として、給与所得に含まれます▼

「基本的に」なので、例外はあるんですけどね。

芸能人の衣装は、判断がむずかしい

とはいえ芸能人の場合、被服費と経費との境目は曖昧になりがちです。

「人前に出る」というその業務の性質上、着飾ることも仕事の一部と言えなくは無いためです。

そこで税理士や税務署は、次のような分類に応じて、その被服費が経費になるかどうかを判断しています。

芸能人の被服費が経費になるかどうかの分類
  • 出演用にしか使えないもの
  • 出演用だけど、プライベートでも使えるもの
  • 私的にしか使わないもの

出演用にしか使えないものは、経費になる

ショーウィンドウの中のマネキン

芸能人の服やアクセサリーのうち、出演用の衣装にしか使えないものは、全額経費にできます

100%仕事でしか使わないのであれば、その購入費用も100%経費にすべきであるためです。

なお出演用にしか使えない衣装とは、具体的には次のようなものが考えられます。

もっぱら出演用といえるものの例
  • 演出上の特殊な機構を備えている
  • 特定の演目においてのみ着用する
  • キャラクターを象徴する衣装として一般に認知されている

たとえば↓こういうのとか

↓こういうのとか

↓こういうのとか

プライベートでは一切着ません。

と言ってすんなり受け入れられるものであれば、その購入費用を経費にできると考えて良いでしょう。

出演時に着用したけど私的にも使えるものは、一部経費になる

かばんとアクセサリー

出演時の衣装として購入したけど私的に使えるというものは、一部分だけ経費にできます。

部分的に事業に使うのならば、経費もその部分だけは認めようということですね。

より具体的に言うと、次のそれぞれの割合を客観的かつ合理的に区分している場合にだけ経費にできるとされています。

経費にするために、算出する必要がある割合
  1. 出演時の衣装として使った割合 事業使用割合といいます。
  2. 生活用品として使った割合 家事使用割合といいます。

ちなみに経費にできるのは購入金額全体ではなく、そのうち出演用に使った部分のみです。

たとえば10万円で購入した服を40%仕事用の衣装として、60%を生活用品として使っていたっとしましょう。

この場合には、10万円の40%である4万円が経費にできるという計算になります。

洋服の事業使用割合を出すのはむずかしい

ところが、結構むずかしいのです。

洋服やアクセサリーについて、事業使用分と家事使用分とに按分するのは。

衣食住にまつわる費用は、日常生活と密接に関係しているものだからです。事業と生活との境目が曖昧である上に、その境が限りなく生活寄りなのであります。

おまけに光熱水道費(使用量)とか土地建物にまつわる費用(使用面積)とか違い、定量的に捕捉することは困難を極めます。

芸能人・スポーツ選手の事例を参考に

話は変わりますが、チュートリアルの徳井さんは

私服で劇場や収録の場に臨むこともあるから

という理由で、私服の購入費用を経費にしていたそうですね。

では、たとえばその私服の購入金額が10万円だったとして、そのうちいくらを経費にすべきでしょうか?

その根拠は?「なんとなく」ではなく合理的に、主観的ではなく客観的に算出できますか?

けっこう難しいのではないかと思います。

また業務で使ったというからには、その用途を裏付けるような記録が必要とされます。購入時の領収書を残しておくことはもちろん、帳簿に具体的な使途を記載しておかねばなりません。

芸能人とは違うのですが、元中日ドラゴンズの森野氏も、このあたりの不備が指摘されて、衣服やアクセサリーの経費性が認められませんでした。

取引の記録等に基づいて業務の遂行上直接必要な部分を明らかに区分していた事実を確認することはできないし、他に業務の遂行上直接必要であったことを明らかに区分することができると認めるに足りる客観的な証拠もない

名古屋国税不服審判所 2017年5月8日裁決

というわけで、普段着として使えるような洋服・アクセサリーを経費とするためには、相応の理論武装が必要で、中でも記録や証拠を固めておくことが重要になります。

税務調査の現場では、大した指摘を受けないことが多いんですけどね^^;

私的にしか使わないものは、もちろん経費にならない

洋服店の窓越しの服

私的にしか使わない洋服やアクセサリーは、経費にできません。

タレント業を行うにあたって必要な費用と認められないためです。

まあ、当たり前といえば当たり前ですよね。

なんですけど、意外と経費に入れちゃいがちなのですよ。

なんとかして税金を安くしたい

とか

経費になるのとならんの、分けるのめんどい

というお気持ちで。

ところがどっこい。そういったものは、高い確率で税務調査時に否認されます。

最悪「重加算税」という重いペナルティが課されることもあるのですよ。

さらにさらに、他の正常な経費や収入にまで疑いの目をかけられかねません。

まとめ

時計とネクタイ

芸能人・タレントの洋服やアクセサリーがどの程度経費になるか、お伝えしました。

芸能人の洋服・アクセサリー代はどこまで経費にできるか
  • 出演用にしか使えないもの 全額経費に出来ます。
  • 私的にも使えるもの 一部を経費にできますが、相応の理論武装が必要です。
  • 私的にしか使わないもの もちろん、経費にできません。

この記事を書いたひと

伴 洋太郎(ばん ようたろう)
伴 洋太郎(ばん ようたろう)税理士
BANZAI税理士事務所 代表税理士。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。1982年6月21日生まれ。個人事業主、フリーランス、小規模法人の税務が得意で、一般の方向けにやさしい解説記事を書けるのが強み。詳しいプロフィールはこちら。
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